メールの書き方

E-mailは極めて便利な意思伝達手段として普及してきました。友達とおしゃべりする感覚でメールを書くことも多いと思いますが、目上の人や知らない人へメールを送る際には、それなりに気をつけなければならない点が出てきます。ここでは、ある程度フォーマルな局面でメールを書く場合にわきまえるべき最低限の事柄について簡潔に述べてゆきたいと思います。


1) 題名のつけ方
個人でメールをやりとりするときは、題名について特にこだわりはないと思います。「やっほー」とか「元気?」とか、ざっくばらんな題名を使うことも多いでしょう。一方、仕事や研究にもメールを活用している人たちは、1日に届くメールが100通を超えることも決して珍しくはありません。続々と届くメールを、一つ一つ読んでいくのは大変な作業になりますし、時間の浪費にもつながります。ですから、このような人は、多くの場合メールの差出人と題名だけで内容を判断します。よって、送信する側としては、メールで何を伝えたいのかということを、題名欄に簡潔に記す必要があります。題名に「連絡事項」とか「こんにちは」と書かれているだけでは、内容が何なのか分からりません。メールを送ってきている以上、連絡したいことがあるのは分かりきったことですから、いつ何をするのか(したのか)について簡潔に記しておきたいところです(例:「前期試験の件」、「8月1日会合の件」、「合宿の待ち合わせについて」など)。題名は本文を思いっきり圧縮したものにすべきというのが僕の持論です。というのも、後になって「あのことが書いてあるメールはどこにあるんだっけ」と探すときに、題名が内容と結びつかないと検索は極めて困難となります。ですから、題名には必ず、これから伝えることの概要あるいは結論を記すことが肝要となるのです。
2) ひとつのメールにはひとつの用件
先ほど述べたことにも関連しますが、ひとつのメールに沢山の用件を書き連ねるのは控えるべきです。同じ相手に送る場合であっても、テーマ別にメールを分けて送るべきです。届くメールが3通、4通に分かれたところで、相手にとっては整理し易くなるメリットはあってもデメリットは全くありません。
3) 本文の書き方
先に述べたような理由で、このメールで何を伝えたいのかということを出来るだけ早く分からせることが重要です。また、文章を書く際には6つのCが必要だと言われます。すなわち、Clear, Courteous, Concise, Confident, Correct, Conversationalということです。

- Clear(明快に分かりやすく)
要件を伝えるときにはハッキリと伝えなければなりません。ごちゃごちゃと経緯や過程を書き連ねるよりも、結論と要旨を最初に伝えておく方が、見る側としても理解が早まります。

– Courteous(丁重に)
E-mailは気軽に書いて送れる便利なメディアではありますが、文章として他人の目に触れるものでもあります。親しき中にも礼儀ありという諺がある通り、最低限の丁寧語は用いるようにするべきです。また、敬語の用法を間違えるようなことがあってはなりません
– Concise(簡潔に要領よく)
口語体では主語が省略されたり、「あれ」「それ」などの代名詞が用いられることも間々ありますが、文章で用件を伝える場合には、自分が何をしたいのか、あるいは誰に何をして欲しいのか、即ち5W1H(When, Where, Who, What, Why, How)を具体的に記すことが必要です。

– Confident(確信をもって)
情報というのは、不確実、不確定なものであっても多くの人に知れ渡るとそれが事実として認識されがちです。たとえ悪気はなくとも、事実と異なる風説が流布されることは好ましいことではありませんから、自分が確信を持てないことや曖昧な事象は書かないか、確信が持てないことを率直に認めるべきだということです。

– Correct(正しく)
いい加減に書いた文章は読み手が疲れてしまいます。メールは文章として他人の眼に触れるものであり、記録として残ってしまうものですから、送信する前に本文を読み返して、表現や文法がおかしくないかをチェックするようにしましょう。また、Microsoft Wordには文章校正機能がありますから、これを利用するのも一興です。

– Conversational(自然な日常語で)
先に述べたことと相反するようにも思えますが、文章だからといって、とりたてて難しい熟語や表現を使う必要はないということです。それよりも、相手に自分の意思をはっきり伝えることを優先すべきだということです。

4) 日本語の表現
同じ用件を伝えるにしても、書き方次第で相手の受ける印象はかなり変わります。例えば、上司から「来週の会議の資料はちゃんと準備しているのか」という問い合わせのメールが来たとします。この返事に「分かってますって。来週迄に適当に時間を見つけてやっておきます」と書いてしまったとしたら、仕事への取り組みがいかにもいい加減だと思われてしまうでしょう。同じ内容を書くにしても、「了解しました。現在準備を進めていますので、期日迄には必ず用意します」とすれば、文章が引き締まるだけでなく、前向きな印象を与えることが出来ます。
5) 返信について
どんなメールに対しても、読んだらすぐに返事を書くということが重要です。時間をかけて調べた上で返答しなければならない場合もあるでしょうが、「メールを受領しました。のちほどお返事します」という簡潔な返事をするだけで、少なくともメッセージは伝わったのだということは伝わります。届いたメールの返事を考えつつ時間が過ぎていくと、無視されたのではないか、あるいはちゃんと届いていないのではないか、といった不安を相手に抱かせることになりますから注意が必要です。
6) メールの引用
返信する際には、他人のメッセージに対してコメントを加える場合が多いと思います。この場合は、かならず必要な部分だけを引用して、不要な部分は極力削除するようにしましょう。また、返信する場合には相手のメッセージに必ず引用符(”>”または”|”をつけて、自分のコメントと区別するようにしましょう。メールソフトによっては、標準設定で引用符がつくようになっているものも多いようです。なお、ビジネスの世界においては、仕事の流れが分かるようにわざとメールを全文残しておいて返信する、という流儀もありますが、余程の理由がない限りこのようなやり方はお勧め出来ません。
7) 結語
メールのおしまいには必ず「以上」と記すのが礼儀です。連絡事項がどこからどこまでなのか、あるいは、メールが書きかけで送られてしまっていないかを識別する材料になります。
8) HTMLメール
最近のメールソフトの多くでは、HTML形式のメールを送ることが出来ます。Microsoft Outlook Expressでは、初期設定でHTML形式が指定されているほどです。HTML形式のメールでは、文字の大きさや色を変えられるばかりではなく、メールの中に画像を貼り付けることも出来ます。一見便利なようですが、送る相手のメールソフトがHTML形式に対応していないと、文字化けが発生してしまいます。また、メールの容量自体も大きくなってしまいますから、特別な理由のない限り、メールはテキストのみで送るようにして、HTMLメールの使用は控えるべきです。
9) 機種依存文字について
Windowsで(1)、(2)、(3)と書いた文字は、Macintoshでは(日)、(月)、(火)と表示されてしまいます。このように、OSによって異なる表示をしてしまう文字を機種依存文字と言いますが、メールを読む相手がどのような機種で読むことになるのかは分かりませんから、そうした文字は使わないよう心がけましょう。出来るだけ、キーボード上にある文字や記号だけを用いるようにするのがベターです。
10) メーリングリスト
メーリングリスト(ML)とは、一つのアドレスにメールを送るだけで、登録されたメンバー全員にメールが配信されるという便利なシステムです。主としてグループ内で特定の話題に関して情報を交換するために使われます。一般のメールが1対1の対話であるとすれば、MLは多人数で繰り広げられる会議と言うことが出来るかも知れません。いずれにせよ、MLと普通のメールは目的が自ずと違うものだということを意識しなければなりません。会議の場で特定の人たちだけが分かる内輪ネタを話しても話は進みません。それと同じように、特定の人だけに向けた話題をMLに流してはいけません。私信ならばその人にだけメールを送ればいいことです。相手のアドレスを探すのが面倒だからという理由だけでMLにメールを撒き散らせば、関係ない人にいちいちメールを受信、開封させるという面倒をかけることになりますし、読んでみたところで、何の話題なのかも分からないメールが届くのは精神衛生上も好ましいことではありません。また、メーリングリストというものは、100人の参加者がいたらサーバが自動的に100通分コピーして配信する仕組みになっています。つまり、私信を1通送るたびに、99通の無駄なメールをサーバにコピーさせるということです。また、メール1通のサイズが100KBだとすると、100通コピーした段階でサイズは 10MB(フロッピーディスク8枚分)に膨れ上がってしまいます。サーバやネットワークへの負担という観点からも、私信のばら撒きは慎みたいところです。
11) メールアドレスについて
自宅用、学校用、携帯電話、ウェブメールなど、最近では複数のメールアドレスを持つことが珍しくなくなりました。僕自身、最大で20個以上のアドレスを持っていました。しかしながら、色々なメールアドレスからメールが届くようになると、一体どのアドレスに返信すればいいのか、相手は戸惑ってしまいます。現在では、僕は会社の仕事用アドレスと、自宅用アドレスと、メーリングリスト用のアドレス、計3つしか使っていません。複数のメールアドレスを使い分ける場合は「このアドレスに送れば、必ず読む」というアドレスを一つだけ周知する、あるいはメールソフトの設定で「返信先(Reply-to)」を常にひとつのアドレスにするなどの工夫が必要になると思います。折角相手がメールを送ってくれたのに、自分が沢山のメールアドレスを持っていたがためにチェックを忘れて読み損ねる、というのはあまりにも寂しい話ですし、メールを送った相手が目上の人であれば失礼なことにもなりかねません。
12) 略語について
今日のようにインターネットが普及する以前、外国との通信手段は国際電報あるいはテレックスが多く用いられていました。これらは文の長さによって課金されるため、文字数を減らす工夫がなされました。その名残としてE-mailでもテレックスの略語を使う人がいます。現在でも使われる主なものを下記します。

ATTN=Attention (?宛)
LTR=Letter (手紙)
FYI, JFYI =(Just) For your information (御参考迄)
TKS=Thanks (ありがとう)
ASAP=As soon as possible (出来るだけ早く)
PLS=Please (お願いします)
PCI=Please confirm it (確認願います)
PIC=Person in charge (担当者)
ETD/ETA=Estimated Time of Departure(Arrival) (出発/到着予定時刻)
FLW=Follow(追う)
RGDS, BR=(Best) Regards (敬具)

略語を無理に用いる必要はありませんし、用いたところで相手に通じなければ意味がありませんが、どういう意味なのか知っておいて損はないでしょう。
【参考文献】
『組立式英文ビジネスレター辞典』 松本安弘、松本アイリン共著/北星堂書店
『失敗しない電子メールマナー』 “Internet Magazine” 2000年12月号記事/インプレス